GREETINGS!


サリュテーション・コンソーシアム ニュースレター
1999年9月

目次

会長からのメッセージ
サリュテーション・ニュース
マネージング・ディレクターより
サリュテーション・シナリオ
製品フォーカス
テクニカル・トーク
展望
イベント情報

会長からのメッセージ

サリュテーション・コンソーシアムは前進を続けています。IrDA 実装を促進するための手段として、IrDA (Infrared Data Association)に加盟しました。無線環境におけるコンソーシアムの支援と有用性を示すため、COMDEXおよびBluetooth Developers ConferenceにおいてBluetoothと協業します。また、PalmSourceでは、サリュテーション-Liteのインプリメンテーションのデモをお見せする予定です。

新たに2つのメンバーシップ・レベルが追加され、コンソーシアムへの参加は個人と組織の両方にとってより簡単になりました。いずれのレベルも、条件を満たしていれば会費は無料です。他メンバーと共有可能なサリュテーション仕様のインプリメンテーションをコンソーシアムに寄与する組織に対して会費を減額するという、メンバーシップ・グラント(技術奨励金)制度もできました。さらに、まもなくメンバー登録をオンラインでできるようになります。

コンソーシアムでは、サリュテーション・アーキテクチャを利用しやすさを改善しています。無料でサリュテーション仕様をダウンロードできるだけでなく、メンバーはサリュテーション-Liteのベータ版ソース・コードをアクセスできるようになります。このコードは、ベータ・テストが完了した時点で一般に入手可能になります。

サリュテーション・ニュース

新しいメンバーシップ・レベルとメンバーシップ・グラント(技術奨励金)制度を追加

サリュテーション・コンソーシアムは、新しい2つのメンバーシップ・レベルとメンバーシップ・グラント(技術奨励金)制度を発表しました。

コンソーシアム憲章に関心をお持ちの個人で、学術機関に所属する個人のために、アカデミック・メンバーシップが追加されました。これにより、研究者がサリュテーション・アーキテクチャの開発に影響を与える機会が設けられ、サリュテーション・コンソーシアムは広範な研究環境においても知られるようになります。会費は無料です。ただし、アカデミック・メンバーはコンソーシアムの運営に関する議決権はなく、理事会のメンバーにもなれません。

名誉メンバーシップは他の標準団体やコンソーシアムが対象で、それらの団体のメンバーシップと交換されます。会費は当該団体の一般メンバーと同レベルです。名誉メンバーはコンソーシアムの運営に関する議決権はなく、理事会のメンバーにもなれません。

コンソーシアムはまた、メンバーシップ・グラント(技術奨励金)制度を発表しました。既存のコンソーシアム・メンバーやメンバーになることに関心をお持ちの企業は、会費に充当するための一括補助金5,000米ドルを志願できます。メンバー企業は、サリュテーションのWebサイトで無料で配布可能な有形技術資産を寄与する必要があります。たとえば、サリュテーションのテスト用ソフトウェアや、サリュテーション・プロトコルをサポートするベータ・コードなどです。

「真の標準として受け入れられるためには、すべての関連団体にまで浸透する必要性があることを理解しています」と、サリュテーション・コンソーシアムのサリュテーション・コンソーシアムのロバート・パスコ会長は言います。「標準のサービス・ディスカバリー・テクノロジーの成功は、商業的支援と学究的支援の両方に依存しています。」

サリュテーション・コンソーシアムには、新たに追加した2つの他に、既存の2種類のメンバーシップがあります。コア・メンバーの会費は年間$50,000で、議決権を有し理事会に理事を送ることができます。一般メンバーの会費は年間$5,000で、サリュテーション・テクノロジーを早期にアクセスでき、またテクノロジーの設計に影響を与えることができます。

サリュテーション-Liteベータ・プログラムの発表 (メンバー専用)

4月に発表されたサリュテーション-Lite(TM)プロジェクトでは、Windows CEおよびPalm OS用にサリュテーション・アーキテクチャのコンパクト版を作成しています。モバイル装置におけるサリュテーション・アーキテクチャの価値を示すことを意図しています。

サリュテーション-Liteのベータ・テスト・プログラムが始まります。コンソーシアムのメンバーは、ベータ・テスターとして登録すると、ベータ・レベルのソース・コードを入手できます。ベータ・プログラムへの参加に関心をお持ちの場合、[email protected] までお問い合わせください。

ボウズ博士が最初のアカデミック・メンバーに

アカデミック・メンバーの第1号として、タメル・ボウズ博士がコンソーシアムに加入しました。ボウズ博士は、コロラド大学デンバー校における電子工学の終身准教授です。博士はデジタル信号プロセッシング、コミュニケーション、多次元システム理論といったトピックについて、さまざまな雑誌や会議で70以上もの論文を発表しています。特許も2つ保有し、研究に関するいくつかの賞も受賞しています。また、最近の埋め込みJavaテクノロジーを扱った研究も含めて、多くの研究助成や契約を受けています。ボウズ博士は、サリューテーション-LiteのJava版に興味を示しています。

サリュテーションとBluetoothのマッピングが利用可能に

コンソーシアムはサービス・ディスカバリー・プロトコルの一貫性を保証するために、Bluetooth Special Interest Groupと協業してきました。その結果、Bluetooth環境でサリュテーションをどのように利用できるかを示した技術白書を発行しました。技術白書はSalutationのWebサイト(http://www.salutation.org/whitepaper/BtoothMapping.PDF)からダウンロードできます。

サリュテーションがIrDAに参加

サリュテーション・コンソーシアムはIrDA(赤外線データ通信標準化団体)に加入しました。IrDA技術に基づくサリュテーション-Liteを初めてロールアウトするので、IrDAの活動を支援するのはごく自然なことです」と、ロバート・パスコ会長は言います。IrDA環境でのサリュテーション利用に関する適用申請案が送付され、現在IrDAでレビュー中です。詳細については、本ニュースレターの各テクニカル・トークの項を参照してください。

モバイル分科会の編成

サリュテーション・コンソーシアムは、モバイル技術と従来型のオフィス・ニーズとの融合の技術的な掛かり合いについて調査する分科会を編成しました。ノート型、パームトップ、およびハンドヘルド・コンピュータなどのモバイル装置は、情報ベースへの接続を保った状態で広範囲にわたる可動性をもたらします。しかし、このような技術によって接続が保たれるにもかかわらず、モバイル・ユーザーは印刷、ファックス、スキャンなどの基本機能から今なお孤立していると感じています。

サリュテーションのモビリティー・分科会は、街角のコピー・センターやホテルのビジネス・センターに見られるような機器と自社の情報ベースとの間で情報をやりとりする方法を研究します。目標は、サリュテーション技術によってモバイル・ワーカーが自分のニーズにもっとも適する機器やサービスを「見つけてバインドする」ことができるようになることです。この分科会の詳細については、[email protected]までお問い合わせください。 本レターのシナリオの項も参照してください。

 

マネージング・ディレクターより

サリュテーション・コンソーシアムのメンバーであることの価値

個人、企業、あるいは団体がサリュテーション・コンソーシアムのメンバーになる理由は何でしょうか。答えは、メンバーになれば個人的およびメンバー相互に共通したビジネス目標の達成に役立つ機会が豊富に得られるからです。このような機会は、製品やサービスの種類を問わず、情報テクノロジー産業のあらゆるセグメントに属する企業や団体に対して開かれています。現在のメンバー・リストには、ハードウェア・メーカー、システムおよびアプリケーション・ソフトウェアの開発会社、ネットワーク・ソリューション提供会社、サービス提供会社、さまざまな関連商品および消費者製品の販売会社も含まれます。

あなたの参加

サリュテーション・コンソーシアムのメンバーになると、相互運用性および情報交換のオープン標準を策定して推進する最先端技術組織の一翼を担う機会が与えられます。コンソーシアムは広範囲のネットワーク・アプリケーション、機器、サービスに適用可能な、相互運用できて低コストのデータ交換モデルをサポートするテクノロジーを作成します。

アーキテクチャの方向性に影響

メンバー企業はコンソーシアムのプロセスに参加する際、それぞれメンバー固有の要件とコンソーシアムおよび業界全体としてのニーズを満たすオープンなサービス・ディスカバリー・プロトコル技術を共同で作成し影響力を及ぼすことに最大の関心を持って臨みます。

有益なビジネス・リレーションの確立

コンソーシアムは企業が他の最先端企業や個人とビジネス上の関係を深める絶好の環境を提供します。コンソーシアムの分科会、理事会、および継続的なコミュニケーションを通して、相互に有益なビジネス・リレーションを確立できる機会が常にあります。サリュテーション・コンソーシアムのメンバーは、開発プロジェクトの共有、製品テスト調整、共同マーケティング活動、およびその他ビジネス成果の改善につながる提携などを始めています。

広告・宣伝の利用

サリュテーション・コンソーシアムは、メンバー企業が利用できる広告・宣伝活動を継続的に行っています。これには、プレス・リリース、新聞や雑誌の記事、ニュースレター、技術白書、トレード・ショー、業界のコンファレンス、Webページ投稿などが含まれます。

オファリングおよび割引からの利益

サリュテーション・コンソーシアムは非営利団体として、メンバー以外の企業には提供されない教育やセミナー、開発/テスト・ツールや支援ツール、製品やサービスの割引を提供できます。これらにより、メンバー企業は市場において財務的に優位に立てます。製品やオファリングの中には、無料で入手可能なものもあります。メンバー企業は製品やオファリングを早期にアクセスでき、これもまた競争上有利になります。詳細については、サリュテーションのWebページ(www.salutation.org)を参照してください。

メンバーシップ・レベル

·        コア・メンバー ―― 議決権があり、理事会に理事を送ることができます(年会費:$50,000)

·        一般メンバー ―― 早期アクセス可能で、サリュテーション技術の設計に影響力があります(年会費:$5,000)

·        アカデミック・メンバー ―― サリュテーション技術の開発プロセスに対して意見を述べることができます (学究機関の個人に対して無料)

·        名誉メンバー ―― 標準団体やコンソーシアムに対する無料の会員権。当該団体と同レベルの会員権を交換します。

コンソーシアムは、$5,000のメンバーシップ・グラント(技術奨励金)制度をすでに発表しました。適用対象は、サリュテーションのWebサイトで無料で配布可能な有形技術資産をコンソーシアムに寄与する組織の会費です。

サリュテーション・メンバーの特典

サリュテーション・メンバーの特典には次のものがあります。

·        戦略策定および技術開発に積極的に携わり、業界標準にも影響を与えることにより、ネットワークで結ばれたデジタル・オフィスとパーベイシブ・コンピューティングの将来に影響を与える。

·        コンソーシアムにおいて、今日の相互運用性の問題の解決に従事する最先端企業と重要なパイプを確立する。

·        情報処理業界で世界的に認識されている作業に加わり、サリュテーション・アーキテクチャおよび技術の開発/機能強化プロセスに精力的に参画する他の国際的メンバー企業とやりとりする。

·        サリュテーションのロゴの認識度を高めることを意図した、サリュテーションのマーケティングおよびプロモーション・プログラムに参画する。

·        サリュテーションがスポンサーとなるプレス・リリース、文献、Webページ、ニュースレター、広告、トレード・ショーを活用して、各メンバー企業や団体のプロモーションを行う。

以上が、サリュテーション・コンソーシアムのメンバーであることにより享受できる利点の例です。まだメンバーでなければ、是非みなさまご自身、または所属団体が享受できる具体的な利点を調べてみてください。ご質問や詳細情報は、[email protected]までご連絡ください。

サリュテーション・シナリオ

「ごあいさつ」の各号で、「サリュテーション・シナリオ」の項にサリュテーション・アーキテクチャーの潜在的な利用方法をハイライトしています。これは、サリュテーションが業務にどのように役立つかを視覚的に考えていただくことを意図したものです。まず、どのようにサリュテーション対応製品やサービスが問題解決に利用されるかを説明し、次に覆いを外してサリュテーション技術がそのシナリオをどのように実現させているかを示します。

移動するセールスマンの話しを聞いたことがありますか...

トビーは服飾メーカーのトップ・セールスマンとして、訪問した大手デパートでバイヤーと契約締結できるように3つの重要な戦略に集中しました。まず最初に、製品ラインについての分単位の最新情報を顧客に提示することです。2つ目は、各バイヤーの直接の要求に合わせて即座にプレゼンテーションをカスタマイズすることす。最後は、会議終了前に、顧客の要望事項に合わせてカスタマイズした提案書を印刷して提供することです。

トビーは、ハンドヘルド型のモバイル・コンピュータとデジタル携帯電話で武装しています。これらの機器にはBluetoothおよび赤外線の無線技術が備わっていて、トビーは新しい次元で仕事ができます。すなわち、データベース接続性とオンディマンドのローカル印刷を駆使できるようになります。これらの機能を使えば顧客とデータベースをつなげたままにしておくことができ、外回りの多い営業担当者も簡単にデータやサービスをアクセスできます。

最後の販売訪問から次の訪問へ移動中に、トビーはバイヤーのシンディ・ブラウン氏と要望について打ち合わせます。デジタル携帯電話で会社のデータベースに接続された手のひらサイズの機器を使い、トビーはバイヤーの要望を満たす製品ラインのデータを操作して、顧客の要望に則した製品に関する最新情報を取り出します。トビーはこの次の販売訪問に専用にデータベースを構築し、ログオフします。

図1: デジタル携帯電話を通してデータベース・サーバーに接続されたハンドヘルド・コンピュータ

 

希望どおりの印刷

顧客を訪問する前に、トビーは最寄りの商用ビジネス・センターに立ち寄ります。デジタル携帯電話を使って会社のホスト・コンピュータに接続します。電話のキーパッドを使って、先ほど作成しておいた、次に訪問予定の顧客専用のデータベースをアクセスし、印刷要求を発行します (図2)。ホスト・コンピューターは電話に組み込まれたBluetooth無線技術を使い、ビジネス・センター内にあるさまざまなプリンターおよび多機能機器のそれぞれと折衝して、カラーをサポートし、かつ現在使用中ではない機器を探します。機器が選択されると、デジタル携帯電話は自動的にビジネス・センターの管理コンピュータと折衝して、印刷時間を予約し、必要な課金手続きを行います。

最後に、トビーの会社のホスト・コンピュータは自動的にその機器と折衝し、機器固有の特性に従って印刷ジョブを書式化するために必要な情報を取得します。折衝が完了すると、ホスト・コンピュータは書式化プロセスをアクティブにして印刷を開始します。印刷装置がカラー、丁合、とじしろ指定などの機能もサポートするので、大急ぎでもプロ仕様の文書を作成できます。[1] 顧客ニーズに合わせてカスタマイズしたセールス・カタログの出来上がりです。


[1] このシナリオのもう1つのアプローチを紹介します。トビーはデジタル携帯電話または携帯電話機能を備えたハンドヘルド・コンピュータに必要な情報をすべて直接ダウンロードします。選択した情報を印刷するためにトビーがビジネス・センターに立ち寄った際、デジタル携帯電話またはハンドヘルド・コンピュータがオフィス機器と必要な折衝を行うことができ、カスタマイズしたカタログを印刷できます。

図2: データベース・サーバーと折衝し、ビジネス・センターの印刷装置に接続する

印刷終了を待っている間、トビーは自分のハンドヘルド・コンピュータに保持している顧客プロフィールをレビューします。ブラウン氏はテニスが好きなこと、2人の小さな子供がいること、中華料理が好きなことに気づきます。この情報を頭に入れて、トビーはハンドヘルド・コンピュータをビジネス・センターの赤外線ポートに向けて、コミュニティーのイエローページを表示します(図3)。「五つ星の中華料理レストラン」とタイプして[Enter]キーを押します。数秒後、地図が表示され、それには彼のいる位置といくつかのレストランの場所が記されています。トビーは微笑み、地図を保存します。

 

図 3: 赤外線ポートでコミュニティー情報サーバーに接続する

取り引きをまとめる

トビーが顧客との会議に到着すると、ブラウン氏に対し、彼女の要望を満たすフルカラーの製品カタログを提示できます。ブラウン氏は感心し、いくつか購入することを決定します。販売条件を話し合った後、トビーは収集した情報を使い、ハンドヘルド・コンピュータで正式な入札を処理します。ハンドヘルド・コンピュータに入れておいた標準契約書を素早く修正し、適切な製品コード、数量、納品要件を入力します。続いてトビーはブラウン氏に、彼女の会社の印刷装置をどれか使わせてもらえないか尋ねます。ブラウン氏はトビーをホールにある、プリンター機能も備えたファックス装置まで案内します。ハンドヘルド・コンピュータとファックス装置間で赤外線リンクを確立し、カスタマイズした契約書をファックス装置の印刷ステーションに送ります。これで、顧客に渡せる「カスタム印刷」された入札ができました。一切遅れはありません。リアルタイムのセールスです!

トビーはブラウン氏に、近くに小さな美味しい中華料理レストランがあるので、昼食でもご一緒にいかがですかと誘います。

背後にあるサリュテーション

このシナリオは、サリュテーション・コンソーシアムのモビリティー分科会の主な基本事項を示しています。この分科会は、サリュテーション・テクノロジーがここに記述されているようなすべての「見つけてバインドする」機会に対処できていることを確証します。モビリティーに影響する市場傾向の詳細について知りたい場合、またはこのようなディスカッションへの参加をご希望の場合、[email protected]までお問い合わせください。

製品フォーカス

サリュテーション-Liteテクノロジー

1999年6月にデンバーで開催されたWindows CE Developer's Conferenceで発表されたサリュテーション-Liteプロジェクトは、新たに提案されたサリュテーション-Liteアーキテクチャを介してハンドヘルド機器およびパームトップ機器に対するサリュテーションのサポート機能を示すプロトタイプを提供することを目的としています。また、このプロジェクトは、これらの装置に対する必須要件を満たしていることと、成果物となるアーキテクチャが複数のオペレーティング・システム・プラットフォーム上で実装可能であることを、検証する意図もあります。成功すれば、サリュテーション・コンソーシアムはプロトタイプ・コードに対する使用料不要のアクセスを業界に提供する意向です。今月の「製品フォーカス」では、サリュテーション-Liteに対する要望と、現在コンソーシアムが目指す技術的方向性を概括します。

オペレーティング環境機能ユニット

オペレーティング環境機能ユニットは、ハンドヘルドまたはパームサイズの機器のオペレーティング・システム、プロセッサー・タイプ、デバイス・クラス、空きメモリー量、入出力特性を判断する手段を提供します。これらを知ることにより、サーバーはその環境用に設計されたアプリケーションを送ってインストールできます。現在サリュテーション-Lite用に定義されているオペレーティング環境機能のリストは、サリュテーション-Liteの技術資料の付録Aにあります。

ディスプレイ機能ユニット

ディスプレイ機能ユニットにより、サービス・プロバイダーはハンドヘルドまたはパームサイズのコンピュータ、または偏在するコンピューティング機器上のディスプレイ機能を特定できます。たとえば、ディスプレイがカラーやグラフィックスに対応しているかどうかや、ディスプレイのフットプリントや解像度も判断できます。このような情報を用い、サービスはディスプレイの機能に合わせて情報をフォーマットします。明らかに、ディスプレイ機能ユニットは、その他の領域にも適用できます。たとえば、プリンター、ファックス、あるいは複合機上のディスプレイの機能が判別され、情報サーバーにその機器のユーザーとの効果的コミュニケーションに必要なデータが提供されます。現在サリュテーション-Lite用に定義されたディスプレイ機能のリストは、技術白書の付録Bにあります。

限られた帯域幅で限られたパワー

IRや提案された距離限定の無線Bluetoothネットワークなどの低帯域ネットワークでは、そのネットワークを使うエンティティー間で転送されるデータ量に注意が必要です。ネットワーク内のすべての機器に対して限られた帯域で最大限の可用性を保証するには、データ・トラフィックが最小に保たれる必要があります。このことは、サービス/機能のディスカバリーなど、各サービスの機能に関する応答指令信号をクライアントから送る必要のあるポーリング操作には不可欠です。

この種のネットワークを対象とする機器の多くは、電池で作動します。したがって、サービス/機能のディスカバリーなどのためのデータ・トラフィックを抑えることが、電池の寿命をほかのトランザクション用に温存することになります。

サリュテーション-Liteを介し、サリュテーション・ディスカバリー・プロトコルは、サリュテーション機能交換プロトコル・シーケンス中に交換されるデータ量を削減するように調整できます。具体的には、生成された応答の種類をCapability Exchangeコールに指定する方法が提供されます。Query Capabilityコールに対する3種類の応答が提案されています。

Maximum

MaximumのQuery Capability応答は、現在のアーキテクチャで定義されています。これは、一致する要求済み/登録済み機能単位記述レコードの和集合をサービス記述レコードが含んでいる応答です。

Nominal

NormalのQuery Capability応答は、機能単位ハンドルが登録済み機能単位のハンドルに設定されている場合に、一致する要求済み機能単位記述レコードのコピーをサービス記述レコードが含んでいる応答です。

Minimum

MinimumのQuery Capability応答は、一致する登録済み機能単位の機能単位 IDと機能単位ハンドルだけをサービス記述レコードに含んでいる応答です。

無線プロトコルのサポート

サリュテーション-Liteは、赤外線データ通信標準化団体(IrDA)によるIrDAプロトコルに基づいてモデル化されつつあります。IrDAの利用により、サリュテーション-Liteは数多くの携帯電話やポケベル、ノートパソコンの他にも、3Com製のPalmや類似装置、WinCE ハンドヘルドPC (HPC)、パームサイズPC(PPC)を含む機器のホストに適用できます。Windows環境内では、サリュテーション-LiteはWinSockコール経由でIrDAをアクセスします。このハイレベルなインターフェースを使うことにより、サリュテーション-LiteはTCP/IPや提案中のBluetoothプロトコルなどのその他のプロトコルにも容易に移植できるようになります。

フットプリント

サリュテーション-Liteの機能をサービス・ディスカバリーに限定することにより、コード・サイズ、すなわちサリュテーション-Liteインプリメンテーションで使用される記憶域量が大幅に削減されます。サリュテーション-Liteのサービス・ディスカバリー機能は、業界最小であると確信しています。オペレーティング・システムおよびプロトコルに依存しないこともあいまって、サリュテーション-Liteは、ますます普及するコンピュータ使用環境全域で、一元的なサービス・ディスカバリーを実現できます。

サリュテーション-Liteの技術白書は、コンソーシアムのWebページ(www.salutation.org/whitepaper/Sal-Lite.PDF)からダウンロードできます。

 

テクニカル・トーク

IrDA上のサリュテーション

サリュテーションはWindows Socketインターフェースを介してIrDAにインプリメントできます。今月のテクニカル・トークでは、このテクニックを説明します。

ソフトウェアの関係

図4は、Salutation Mamager(TM)とIrDAスタック、およびその関連アプリケーションとの関係を示しています。この図はクライアント側でもサーバー側でも同じです。Salutation ManagerはIrDAプロトコル・スタックに特有のトランスポート・マネージャを備えており、サリュテーションAPIを介してアプリケーションからアクセスできます。Salutation ManagerはWindows Socketインターフェースを介してIrDA用のサリュテーション・プロトコルを送受信します。以下に、これらのコンポーネント間の通信を説明します。

4: ユニークなTransport Managerを介したSalutation ManagerIrDAプロトコル・スタックの関係

初期化

各Salutation Managerが初期化されると、IrDA Transport Managerが起動されます。Transport ManagerはIRSocketの「socket()」APIを呼び出してIRソケットを作成します。サーバー側のTransport Managerは、ソケット・インターフェースを通してソケットにバインドし、IrDAトランシーバーをlistenモードに設定して、トランシーバーがインバウンド伝送を受け取れるようにします。

Salutation Manager IDの交換

クライアント側のTransport Managerとサービス・デバイスは、他のデバイスをサーチしてサリュテーションに対応しているかどうかを判別します。

サービスのTransport Managerは、SetSocketOpt(IAS_SET)コールを使用して、IrDAスタックのIASレジストリー内にSalutation Manager ID (SLM_ID)を設定します。IAS_SET構造体の値は次のとおりです。

    irdaClassName = "SLM"

                irdaAttribName = "SLM-ID"

                irdaAttribType = 0x00000001

                irdaAttribute.irdaAttribInt = デバイス固有のSLM-IDを示す整数

サリュテーション・アーキテクチャ仕様では、IrDAのSLM-IDは「IrLAPデバイス・アドレス(4オクテット)の後に、16番目のオクテットを通したランダムな値を追加したもの」として定義されています。IrLAPデバイス・アドレスは完全に一意ではありませんが、IrDAプロトコルのモバイルな特性とランダム値の十分な長さ(11オクテット)を考慮すれば、SLM-IDは実質的に一意となります。

クライアント側のTransport Managerは、次のコマンド・ループを使って他のデバイスを探しします。

            GetSocketOpt(IRLMP_ENUMDEVICES)

他のデバイスが検出されると、GetSocketOptは応答したデバイスのリストを返します。続いてクライアントのTransport ManagerはGetSockOpt(IAS_QUERY)を使って、検出されたデバイスがサリュテーションに対応しているかどうかを判別します。サリュテーションに対応していれば、そのSLM-IDの値も検出します。

クライアントのTransport ManagerはSLM_IDと.irdaDeviceIDとの相関関係を確立し、SLM_IDへの要求を.irdaDeviceIDに変換します。

最後に、Transport Managerは検出されたサリュテーション対応の各デバイスに対してIRSockets connect()コマンドを発行します。これにより、各サービス・デバイスに新しいソケット・ハンドルが生成され、このソケット・ハンドルが1つ以上のサービス・デバイスとの間にIrDAリンクを確立します。Transport Managerはこのリンクを維持します。

機能の検索

上記以外のデバイス間の通信は、サリュテーションAPIを介してSalutation Managerによって行われます。

サービス・アプリケーションはslmRegisterCapabilities()コールを使って、デバイスに含まれる機能ユニットの機能を確かめます。サービスのSalutation Managerはこの情報を保持し、IrDAインターフェースを介して受け取ったサービス要求と比較します。

クライアント・アプリケーションはslmSearchCapabilities()を使って、アプリケーションが定義したサーチ基準を満たすデバイスのSLM-IDを判別します。検索基準はslmSearchCapabilities()に含まれる1つ以上の機能ユニット記述レコードを通して指定されます。クライアントのSalutation Managerはこの要求をサリュテーション・プロトコルのQUERY_CAPABILITIESコマンドにパッケージし、IRSocketsのsend()コマンドを使ってサリュテーション対応のすべてのデバイスに送ります。

要求を受け取ったデバイスは、受信した機能ユニット記述レコードの属性をそのデバイスに登録してある機能ユニット記述レコードと比較します。この比較はサリュテーション・アーキテクチャ仕様に定義されているアルゴリズムによって実行されます。比較の結果が肯定的であれば、サービスのSalutation Managerはその応答をサリュテーション・プロトコルのQUERY_RESPONSE応答にパッケージし、IRSockets send()コマンドを使ってクライアント・デバイスに送信します。クライアントのTransport Managerは相関テーブルを使って、slmSearchCapabilities()コールへの応答としてアプリケーションに返されたSLM-IDに肯定応答をマップし、Salutation Managerを通じてその結果をクライアントに送ります。

機能の照会(問い合わせ)

クライアント・アプリケーションはslmQueryCapabilities()コールを使って、特定のサービス・デバイスの特定の機能を判別します。クライアントはデバイスをSLM-IDによって指定します。ここでもサーチ基準はslmQueryCapabilities()コールに入っている機能ユニット記述レコードを通じて指定されます。クライアントのSalutation Managerはこの要求をサリュテーション・プロトコルのQUERY_CAPABILITIESコマンドにパッケージします。クライアントのTransport ManagerはSLM-IDとirdaDeviceIDの相関関係を確立し、IRSockets send()コマンドを使ってQUERY_CAPABILITIESコマンドを指定したデバイスに送ります。

コマンドを受け取ったデバイスは、受信した機能ユニット記述レコードの属性をそのデバイスに登録してある機能ユニット記述レコードと比較します。この比較はサリュテーション・アーキテクチャ仕様に定義されているアルゴリズムによって実行されます。比較の結果が肯定的であれば、サービスのSalutation Managerはその応答をサリュテーション・プロトコルのQUERY_RESPONSE応答にパッケージし、IRSockets send()コマンドを使ってクライアント・デバイスに送信します。この情報はクライアントのSalutation Managerを通じてクライアントに返されます。

データ交換

要求したサービスを検出したクライアントは、IRSockets send()コマンドとIRSockets receive()コマンドを使ってデバイスと他のデータを交換できます。通信が完了したら、クライアント・アプリケーションはIRSockets closeSocket()コマンドを呼び出します。

サービス・アプリケーションはSalutation ManagerのslmUnregisterCapabilitiesコールを使って、他のデバイスに機能を使わせないように設定できます。

拡張

上述の例では、WinSocketsを介してサリュテーション・アーキテクチャをIrDAに拡張しました。他のソケット・インターフェースを使えば、同じやり方を他のプロトコルにも拡張できます。

サリュテーションのサービス・ディスカバリー・プロトコルのIrDAへの実装に関する最新情報は、サリュテーションのWebサイト( http://www.salutation.org/) に掲載していく予定です。

展望

Bluetoothサービス・ディスカバリーと関連技術

((c)1999 Bluetooth SIG。この記事は、BluetoothのWebサイトにある『Bluetooth Newsletter SIGnal』(http://www.bluetooth.com/newsletter1.asp)に掲載されたもので、Bluetooth SGI社の許可を得て転載しています。)

コンピューティング形態がネットワーク中心のモデルへ移行する中で、ネットワーク内で使えるサービスを見つけ出して利用することは、ますます重要になってきています。サービスには印刷、ポケベル呼び出し、ファックスなどの一般的なものは言うに及ばず、電話会議、ネットワーク・ブリッジやアクセス・ポイント、電子商取引機能など、サーバーやサービス・プロバイダーが提供可能なあらゆる種類のサービスが含まれます。

利用できるサービスの検出に標準の方法が必要になること以外にも、いくつか考慮すべきことがあります。たとえば、サービスへのアクセス方法(プロトコルの検出と取得、アクセス方法、ドライバー、および該当サービスを利用するために必要なその他のコード)、サービスに対するアクセス制御、サービスの通知、競合サービスの中からの選択、サービスに対する課金などです。この問題は広く認識されており、多くの企業、標準団体、コンソーシアムなどはさまざまなレベルでさまざまな方法で対処しています。Service Location Protocol (SLP)1、Jini(TM)2、Universal Plug and Play(TM) (UpnP(TM))3およびサリュテーション(TM)4など列挙にいとまはありませんが、これらはすべてサービス・ディスカバリーの特定の局面に対処するものです。

専用プロトコル

Bluetoothサービス・ディスカバリー・プロトコル(SDP)はBluetooth環境に特化したサービス・ディスカバリーに対応します。Bluetooth通信の非常にダイナミックな特性に合わせて最適化されています。SDPは主にBluetooth対応機器からまたはそれら機器を通して利用できるサービスの検出に焦点を当てています。SDPはサービスへのアクセス方法を定義するものではありません。SDPでいったんサービスが検出されると、検出されたサービスに応じてさまざまな方法でサービスにアクセスできます。たとえば、他のサービス・ディスカバリーを使ったり、前述のアクセス方式を使用できます。

SDPは、有用な場面では他のプロトコルをSDPと併用する手段を提供します。たとえば、クライアントはSDPを使って、Bluetooth対応機器が提供するサービスを検出できます。そのサービスの属性の1つがサリュテーションをサポートすることを示す場合、サービスとのそれ以降のやりとりにサリューテーションを使うことができます。(Bluetooth SIGはサリュテーションとSDPとの間のマッピングについて解説した技術白書を発行しています。詳細については[5]を参照してください。その他のプロトコルとの間のマッピングについては、今後発行を予定しています。) SDPは他のサービス・ディスカバリー・プロトコルと共存できますが、単独でも使えます。Bluetooth環境では、サービスはSDPを使って検出でき、Bluetooth SIGまたは他社が定義したその他のプロトコルを使ってアクセスできます。

別のプロトコルを開発する理由

サービス・ディスカバリー・プロトコルに豊富な選択肢がある中で、なぜBluetooth SIGが独自のサービス・ディスカバリー・プロトコルを指定したのでしょうか。前述のとおり、Bluetooth通信のダイナミックな特性により、簡潔でコンパクトなサービス・ディスカバリー・プロトコルが求められます。Bluetooth SIGに寄与するアダプター・メーカーの1つであるMotorolaは、Piano(TM)6プラットフォームに基づいたプロトコルを提案しました。これは、Bluetooth環境にみられるような無線のモバイル・アプリケーションに適したテクノロジーです。SIGはこの提案を受け入れ、多くの修正と調整を行って、Bluetooth仕様 リリース1.0にみられるBluetoothサービス・ディスカバリー・プロトコルを作成しました。このリリースで、SIGはBluetooth環境に非常に適したサービス・ディスカバリー・プロトコルを提供できました。このプロトコルはBluetoothソフトウェア・スタックに組み込まれ、他の多くのサービス・ディスカバリー・プロトコルやテクノロジーと共存できます。

(上記の商標マーク付き名称は、それぞれ所有する会社の商標です。)

参考資料
1) IETF RFC 2165
http://www.ietf.org/rfc/rfc2165.txt

2) http://java.sun.com/jini

3) http://www.upnp.org

4) http://www.salutation.org/

5) サリュテーション・アーキテクチャ API から Bluetooth サービス・ディスカバリー・レイヤーへのマッピング: http://www.bluetooth.com/document/download.asp?doc=172

6) http://www.mot.com/GSS/SSTG/piano/

その他のリソース:『Bluetooth Specification Release 1.0』サービス・ディスカバリー・プロトコル: http://www. bluetooth.com

『Bluetooth Profiles Release 1.0』サービス・ディスカバリー・アプリーション・プロファイル: http://www.bluetooth.com

『Discovering Devices and Services in Home Networks』 (IBM の技術白書),
http://www-3.ibm.com/pvc/nethome/networking.shtml

Eエディター・ノート: このニュースレターの「ニュース」の項で記述したように、コンソーシアムはサービス・ディスカバリー・プロトコルの一貫性を保証するために、Bluetooth SIG (Special Interest Group)と協業しています。この協業の最新の成果は、Bluetooth環境でサリュテーションをどのように利用できるかを示した技術白書に記載されています。技術白書はサリュテーションのWebサイト (http://www.salutation.org/whitepaper/BtoothMapping.PDF)からダウンロードできます。

 イベント情報

CEMA Service Discovery Meeting

パーム・ソース・カンファレンス

(詳細はwww.salutation.org/palmsource.htmを参照)

CapV/MFPA CDP/IOC

(Booth #14) 

 COMDEX Fall 99

Bluetoothディベロッパーズ・カンファレンス

サリュテーション・コンソーシアム理事会

2000 International Consumer Electronics Show